新潟県長岡

新潟県長岡市から来た手紙から

長岡といえば河合継之介ですよ。

あの、世界で3砲しかないといわれておりました、機関銃。当時の機関銃、ガトリング砲という、蜂の巣のような、すなわち鉄砲を束にして、蜂の巣のようにして、ガーーッとハンドルまわすと、バババババババババーッと飛び出す、あのガトリング砲が、なんとこの長岡に2つもあったといわれております。

そうとはしらない、えー、まあいわゆる官軍といわれている、まあ、どうでしょう、長州とか薩摩とかそんなような人たちを混合にして
「さあ、長岡通っていくぞ、ダーッと通って、長岡の殿様、お前んとこなあ、おれら..官軍に、おまえちゃんということ聞いてくれたらそのままにしたるけど、え、食料やら金やら何かださんとなあ、おまえ賊軍、朝敵になるぞ!」
「いや、私どもは歯向かいはいたしません。どうぞお通りください。味方もせねば、歯向かいもいたしません。どうぞそのままおとおりくださ...」
「何をいっとんじゃ、ええ、おまえ金とかおまえ食料とかださなんだら、朝敵やで」
「いやいやいや、私どもは決して歯向かうことはいたしません」と、言って一生懸命頭を下げているのが、今さっき言いました河合継之介という人ですよ。
そら若かった、その、んー、長州かなんかの跳ねっ返りものが
「は、おまえ、ええかげん...なんじゃこんないなかの、おまえ、長岡なんか、やってまえ、バーン、こんなもんおまえ朝敵や」
そうして驚いた。
攻めてみて驚いた。
さっきの
ババババババババ
「なんじゃこれは!」
ババババっともう、総崩れ。
攻めても攻めても長岡は攻められなかったという、こういう、有名なこの、「峠」という、司馬遼太郎さんの出てます。ここがこの土地ですよ。

最後良かったですよ、やっぱり多勢に無勢でやられて行く所があるんですけれどもね。うん。
戦っていく河合継之介そして松蔵というのが 、部下にいるんだ、いつもお供で付いていて
「松蔵行くぞ」
「旦那様気をつけてくださいまし」
最後の戦いの所だ、「松蔵行くぞ」と振り返ったその時に、ちょうどさしかけてあるもの、向こうはね、雪のあのなんか、こう、なんだぁ、いわゆるこっちで言いますと、アーケードみたいなもんですよ。
そんなもの、そんなものがパッて、雪囲いみたいなやつが、振り返って「松蔵行くぞ」と言って、振り返った河合継之介の顔にスッと影のようにかかった。
一緒に付いていた松蔵が「あっ、なんか不吉な事が...」と、思ったとたんにもう、河合継之介はタタタターンと駆け出していた。角を曲がったそのとき、バーンともんどりうって倒れた。それが、相手の撃った弾が、太ももを貫通いたしまして、ドーッと倒れる、倒れる河合継之介「旦那様ー!」駆け寄る松蔵です。
そして今度は長岡を落ちまして、今度は奥州列藩ということで会津に向かってずーっと落ちていくという、なかなか悲しいところ、これが長岡という所でございます。
(1996.8.9ハイヤングKYOTO金曜日)

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